高山研Newsletter (No.46,2005年4月)
4月になり、福岡大学でも新入生が入学しました。
建築学科には109名の新入生が入学しました。今年度からの大きな変化として、今年度入学の学生からJABEEコース(下記を参照ください)が設定されています。
本建築学科では、3年生から3つのコースに分かれます。構造コース、設計・計画コース、総合コースの3つです。
構造と設計・計画コースはJABEE認定コースとして申請し、総合コースは非申請です。JABEEコースの学生には総合コースに比べ、その分野の専門科目の大部分を必修科目として履修することが求められ、それなりの専門性を持たせようとするものです。従って、JABEEコースに進む学生の負担は多少多くなるかも知れません。
しかし、以前は半期の授業が1.5単位で、しかも卒業に必要な単位数は150単位を超えていました。現在は半期の授業が2単位で、卒業単位数は138単位です。そのため以前に比べ卒業はし易くなっていると思われるのですが、学生は何かと忙しそうです。
置かれた環境によって影響を受けるということでしょうか。それとも学生の資質が変わってきたということでしょうか。
JABEEコース申請によって大変になるのは学生だけではありません。実は教員側にも相当の負担がかかることが予想されます。それは審査を受けるために、成績評価の根拠となる試験答案、レポートの類を全て保管しておく必要があるのです。要は、全て証拠が必要となり、成績(点数)の根拠を説明することが求められるようです。ISOに似ているかもしれません。
そもそもJABEEは資格制度と関連があり、資格をグローバルなものとするために、教育プログラムの評価が必要となって、始まったものです。現在、APECエンジニアという資格があり、APEC地域で技術者の資格を統一しようというものです。ただ建築家(Architect)の資格については未だ統一的な基準ができておらず、その点でJABEE申請を見送っている大学も多いようですが。(これは欧米の建築家教育が5年で専門的な教育を受けるのに対し、我が国の建築教育のカリキュラムが大きく異なるからです)
問題は学生がJABEEコースを卒業した場合のメリットですが、今のところ「技術士」の1次試験免除くらいしかありません。しかし、4年後には就職や資格取得に有利になるような制度や社会環境ができることを期待しています。
JABEEは、学生には勉強した内容や身につけた知識・能力を問い、教員には授業のやり方、内容の改善、学生の親身な指導などが問われています。これが契機となって、卒業した大学のブランドではなく、卒業する学生の能力が問われる社会になっていくように思います。ある意味、学生・教員は社会からの厳しい目にさらされるということでしょう。
そうであれば、教員の業績や昇格に関して、研究業績だけを判断基準とするのではなく、授業や学生指導においても業績を評価することが不可欠であると思います。全ての教員が研究に重点をおくのではなく、教育に重点をおいても良いのではないかと思います。こういうことを言うと、大学では研究と教育を両立させることが必要と言われそうですが、大学がエリート養成機関であった時代はそれでも良かったかも知れませんが、大衆化した大学では事情が変わっているように思います。今後、大学も変わっていくことが求められているのです。では、福岡大学はどう変わっていくのが良いでしょうか。我々に課せられた課題です。
JABEEについて:
日本技術者教育認定制度とは、大学など高等教育機関で実施されている技術者教育プログラムが、社会の要求水準を満たしているかどうかを外部機関が公平に評価し、 要求水準を満たしている教育プログラムを認定する専門認定 (Professional Accreditation) 制度です。日本技術者教育認定機構(JABEE : Japan Accreditation Board for Engineering Education)は、技術系学協会(建築だと日本建築学会)と密接に連携しながら技術者教育プログラムの審査・認定を行う非政府団体です。詳しくは、http://www.jabee.org/まで。
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