高山研Newsletter (No.19)

 

中秋の名月も過ぎ、すっかり涼しくなってきました。

大学では後期授業も開始され、学生がキャンパスに溢れています。

研究室の学生は、12月1日の卒業論文の提出に向けて、作業に明け暮れて(?)います。

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先月は免震構造設計指針の講習会が全国で開催されました。

私は全会場に出席してきました。ここでは、指針講習会の状況などを述べてみたいと思います。今回の講習会では、質疑応答の時間を設けており、各会場で活発な質疑応答がなされることが期待されました。内容については私の主観と記憶を頼りにしていますので、多少の誤りがあることもご了解ください。

まず最初は、9月12日に東京での開催でした。参加者は230名程度で、建築会館ホールがほぼ一杯となりました。前日の11日にはWorld Trade Centerビルのテロによる崩壊事件などがあり、遅くまで起きていた方が多かったにもかかわらず盛況でした。主旨説明が東京工業大学の和田章氏によりなされた。免震構造関連の告示が昨年制定されましたが、告示案に対する建築学会のパブリックコメントを参考資料として参加者に配布しました。改訂指針の内容とパブリックコメント、および免震告示をそれぞれ読み比べて頂きたいと説明があった。その後、設計一般を東京理科大学の北村春幸氏、免震部材を高山が、解析問題として入力地震動と構造設計関係について清水建設の田村和夫氏、最後に設計例を久米設計の小幡学氏が解説されました。解説はいずれもパソコン(パワーポイント)を使ったプレゼンテーションとし、アニメーションやビデオを使った効果的な解説ができたのではないかと自負しています。東京会場での質問は設計例で解析に用いている入力レベルとしてレベル2を越えるレベルに対する検討についてはなされていないのか、入力地震動に関連して、軟弱地盤などでは共振の可能性はないのか、積層ゴムの引張特性についてなどの質問があった。

14日は札幌会場での講習会。前回93年の時の講習会は参加者が非常に少なく、今回も心配されましたが、33名の参加がありました。ただ、講師の数は3名までに制限されました(収支の関係でしょうか)ので、主旨説明と設計一般を和田氏、免震部材を高山、午後の解析問題と設計例を大林組の関松太郎氏が担当しました。関氏の担当時間は非常に長く、大変だったようです。質問は高層免震について、共振しないか、塔状比の限界は、軟弱地盤への適用性は、免震と制震とどちらが効果的かなど。また、免震部材のばらつきについてどこまで許容できるのか、という質問もありました。札幌まで行ったので、札幌ドームを見て帰ろうかと思ったところ、サッカーの試合が行われるとのことで、周辺は大渋滞の恐れがあり、飛行機に間に合わないと困るので、諦めて福岡へ戻りました。札幌は大変涼しく、すすきのの夜は賑わっていました。

18日は福岡会場。73名の参加がありました。主旨説明では多田英之氏が、建築基準法の位置づけ、確認業務か許認可業務か、科学技術の問題を法律で規制することの問題など、非常に熱のこもった話をされました。その後、高山が設計一般と免震部材の解説を、午後の解析問題は鹿島建設の竹中康男氏、設計例を東京建築研究所の中澤俊幸氏が担当した。竹中氏は自社の研究所で実施した模型を用いた積層ゴムの動的限界挙動を確認した試験のビデオを紹介した。質問は、免震告示で採用されている等価線形化手法が指針の中では解説されていないが、なぜか? 入力地震動に関して、軟弱地盤上の免震建物の応答解析にEL CENTRO波のような短周期成分が卓越する波形を用いることの妥当性などがあった。福岡会場での司会は、九州大学の川瀬博氏にお願いしましたが、最後のまとめで、20秒免震にすれば絶対大丈夫、これ以上の周期をもった地震動は発生しないから。このためには全層免震しかない、ということを言われていたのが印象的でした。

22日〜24日は建築学会の全国大会が東京大学を会場として開催されました。非常に歴史を感じさせる教室は良かったのですが、発表会場の狭さには少し困りました。

27日は大阪。参加者は107名。主旨説明は多田氏、設計一般と免震部材は高山、午後の解析問題は東京工業大学の山田哲氏、設計例を日建設計の小崎均氏が担当した。質問は、免震建物内に機械などの振動源がある場合、免震建物へ与える影響は? 免震告示による等価線形化法の適用性について、エネルギーの釣り合いに基づいた包絡解析法の精度は? どういった場合に予測精度が悪くなるのか、など。教習会の前日は、大阪にいる卒業生などと懇親の場を設け、非常に楽しい時間を過ごすことができました。

28日は高松会場。高山、山田氏、小崎氏は大阪での講習会の後、高松へ移動し、翌日の講習会に備えた。参加者は48名で、定員に対する割合は東京についで2番目でした。参加者の意欲も高いようでした。司会は高知工科大学の中田慎介氏。初対面でしたが、豪快な先生で四国の構造分野の牽引役といった感じでした。質問は、設計例に関して、地盤特性のより具体的な数値について、免震設計の実施に関して、等価線形化手法に基づいた告示の方法を採用する際に免震指針をどのように参照すればいいのか、など。

翌日は、高松で建設中の6階建て免震建物の現場見学会が開催されたので、それに参加した。参加者は35名以上であった。高松の名物はやはり、讃岐うどんとしょうゆ豆。讃岐うどんでは、地元の方が行くお店に連れて行ってもらって、非常に腰のあるうどんを食べました。福岡のうどんと比べると随分違います。

最後に、各会場を回って感じたことは、熱心に聞いてくださる参加者の方が多かったこと、質問時間をとったことは有意義であったことです。また、プレゼンにも力を入れ、できるだけ分かりやすい解説に努力した委員の方々の努力の賜と思っています。

(平成13年10月5日 高山峯夫記)
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