高山研Newsletter (No.35,2003年8月)
暑中お見舞い申し上げます。
今年の夏は冷夏といわれ、寝苦しい夜は少ないようです。夜風も涼しく、秋風のように思うときもあります。そのため米も不作といったニュースが聞こえてくる反面、夏が苦手な私としては少し嬉しい夏です。
さて、7月末にアメリカのクリーブランドで開催されたアメリカ機械学会(ASME)の圧力容器とパイプ分科会(PVP)に参加してきましたので、ご紹介したいと思います。
なぜ、機械学会?と思われるかも知れませんが、このPVPでは原子炉のような圧力容器やプラントなどのパイプの耐震設計も重要なテーマで、免震構造を使って産業機器の耐震安全性を高める研究発表も行われています。対象が建築と異なっても基本的な考え方は一緒ですので、10年ほど前から時々論文をチェックしたり、会議に参加してきています。
クリーブランドは、オハイオオ州最大の都市。エリー湖の南岸に位置する都市で、名前は1796年メインストリートを設計したモーゼス・クリーブランドに由来しています。人口は約60万人で、都市の主要産業は製鉄、石油、生産工場などです。また、全米の一流企業の30社以上の本社がある重要なビジネス都市でもあります。
会議は市の中心部にあるホテルで開催されたのですが、多くの本社があるという感じはしませんでした。それと天気については気にしていなかったのですが、着いてから2日間は雷雨で、時たま凄い雨が降りました。カリフォルニアなどでは雨は殆ど降らないので、そのつもりでいたのですが、傘も持参していなかったので、2日間はホテルに缶詰状態でした。
ロックンロールの生みの親! "Rock'n Roll"という言葉を世に送り出したのが、ここクリーブランド。この街でDJをしていたアラン・フリードという男性が言った言葉が始まりでした。そのためロックンロール博物館というのもありますが、今回は行くチャンスがありませんでした。
会議は4日間ありました。2日目には共同研究者の発表もありました。今回目立ったのは、台湾からの発表の多さでした。1人の教授とその研究室の大学院生の発表が多く、精力的な研究活動と学生を連れてこられる経済力には驚きました。台湾で発生した集集地震の後、台湾では国家的プロジェクトとして多額の研究資金が大学にきて、研究設備を整えていると聞いています。台湾でも免震や制振構造に関する研究が行われている様子がよく分かりました。ただ、オリジナリティのある研究は少なく、既存の免震デバイスの改良が目立ちました。
クリーブランドでの会議が終わって、ニューヨークに寄ってきました。世界貿易センタービル(WTC)の崩壊現場を見たかったためです。
WTCの跡地は、地下の部分まで露出しており、新しい建設を始める準備が出来ている、といった感でした。跡地の周りはフェンスで囲まれており、死亡した人々の名前を刻んだプレートが掲げられていました。アメリカ人もたくさん見学に訪れていました。
この跡地には、国際コンペで当選したダニエル・リベスキンド氏による建物が建設される予定です。WTCの地下擁壁を残すなどして追悼の意を表しているとは言え、高さ541mという超高層建築が再度表れることになります。確かに、自由の女神像の方からみるマンハッタンのスカイラインはWTCが無くなって寂しいように感じます。しかし、WTC崩壊という大惨事に対して、再度同様の超高層建築を造る必要があるのか、跡地を前にして考えさせられるものがありました。安藤忠雄氏が提案した球状の広場案の方が良いのではないかと思ったり、アメリカの実力を見せるためには果敢に超高層建築を再現すべきなのか、難しい問題です。
皆さんはどのように考えられるでしょうか。
最後になりましたが、本年は千葉県八千代市に我が国初の免震構造(八千代台住宅)が建設されて20年目となります。加えて、多田先生の傘寿(数えで80歳)の年でもあります。
そこで、これらを記念して、例年開催しています多田杯コンペの時期をあわせて祝賀会を開く予定です。今年の11月に祝賀会とゴルフコンペを開催予定です。もちろんどちらか一方だけの参加も大歓迎です。
日程を決めるにあたってアンケートを実施したいと思っています。往復はがきをお送りしますので、希望を記入して頂いてご返信下されば幸いです。〆切は8月末日です。ご協力の程よろしくお願いいたします。
(平成15年8月11日 高山峯夫 記)
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