高山研Newsletter (No.45,2005年1月)

あけましておめでとうございます。

昨年は「災」がその年の漢字として選ばれるほど、災害が多い年でした。

台風の上陸回数は過去最大の10回でしたし、新潟や北陸地方での豪雨とそれに伴う水害、新潟県中越地震による被害、スマトラ島沖地震による津波被害、死者は12万人を超えたようです。

災害は繰り返し起こっているにもかかわらず、被害が発生しています。我々は、災害から何を学んでいるのでしょうか。頭では理解できていても、それを自分自身の問題として認識できない、想像できないのでしょうか。

昨年のクリスマスに新潟県にある免震建物の見学が日本免震構造協会を中心として計画されました。私も調査員の一人として参加しました。見学できたのは

・小千谷総合病院「水仙の家」(老人保健施設、4階建て)(小千谷市)

・北陸学園(専門学校校舎、8階建て)(長岡市)

NSコンピュータサービス(インターネット関連サーバー、4階建て)(長岡市)

・水野内科クリニック(診療所・住宅、3階建て)(三条市)

4つの建物でした。

いずれの建物でも免震効果が発揮され、構造体の損傷はいうに及ばず内部の家具や機器の転倒などは全くありませんでした。水仙の家と北陸学園の建物では地震計が設置されており、詳細な解析が今後行われるでしょう。免震建物の中で地震を体験した人の話では、揺れ方がゆったりしていて、船に乗っているようだという感想でした。自宅などで感じた揺れとは全く異なるといわれていました。免震層の変位は、最大10cmくらいで、設計変位に比べて1/3程度でしょうか。

今後、免震構造協会から調査報告書を出す予定ですので、もっと細かいデータが掲載されることになるでしょう。

20041218日付けの読売新聞の解説に面白い記事があったので抜粋して紹介します。

「安全な家とは何だろう−−−。家は建築基準法の新耐震性能通りに建てれば、倒壊せずに済むはず。だが外見上は無傷でも、室内でタンスが転倒し、窓ガラスの破片や什器が散乱してけが人が続出するとあっては、果たして安心できる家と言えるであろうか。」

「これまでの耐震建築は、建物が倒壊しないように大地にがっしりと建つ”固い技術”だ。地震動を建物に直接伝えるため、内部で転倒し、損壊しやすい難点がある。これに対して免震建築は、建物と基礎の間に積層ゴムや金属球を使った装置を入れ、地震のエネルギーを吸収し、弱める仕組み。強い地震がきても、柳に風と受け流す”柔らかい技術”である。免震建築が実用化して20年になる。(略)住宅用はやや出遅れたが、昨年秋、ある住宅メーカーが免震住宅のテレビ広告を流してから広く知られるようになった。(略)だが課題もある。工費が2,300万円と割高なうえ、軟弱地盤では改良工事がいる。510年おきに定期点検の費用もかかる。それでも安全、安心が保障される現状で最良の工法なら、国や自治体は補助金や減税策を使ってでも普及すべきではないか。」

「国土交通省の幹部にこの考えを当ててみた。『免震を奨励すると、既存の耐震が危ないものだとレッテルをはることになり、逆差別になる(からできない)』。いかにも役所的な返答だった。では、首相官邸をはじめ国の主要施設が免震建築を積極的に採用しているのはどういうわけか。(略)これでは、公的施設優先、一般住宅はどうにでもなれといわんばかりに聞こえる。」

「建築は経験工学だけに、保守的発想が全面に出るのも分からなくはない。だが安全、安心のためのより良い技術の選択は、できるだけ柔らかい頭で考えたいものだ。」

今年も免震建築の健全な発展に努力をしたいと思います。皆様にとって今年もいい年になりますようにお祈り致します。


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