〈RSL免震システム〉
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4. 設計方法

1. 免震設計の考え方


包絡解析法を用いた設計フローチャート

構造基本設計
 
  1. 構造物(上部構造,免震層,基礎構造)の目標性能の設定
    ……地震,風等の外力に対して構造体の応答の許容限界値を設定
  2. 上部構造の部材断面仮定・固定荷重(積層ゴムの負担荷重)の算出
 
免震部材の設計
 

Tf:免震周期(ダンパーなしでの固有周期)
VE:地震エネルギーの等価速度
δmax :免震層の応答最大変位
α1:免震層の層せん断力係数
αs:ダンパー群の層せん断力係数
S1:積層ゴムの1次形状係数
S2:積層ゴムの2次形状係数
G:ゴムのせん断剛性

  1. 免震層の設計条件(Tf ,VE,δmax,α1,αs,S1,S2,G)の設定
  2. 免震部材簡略設計(包絡解析)の実行
  3. 積層ゴムの設計
  4. 免震周期の確認
  5. ダンパーの設計
  6. 免震層の剛性・偏心量の計算
  7. 免震層の復元力特性の決定
 
上部構造の設計
 
  1. 上部構造の設計用せん断力を設定
    ……免震層の層せん断力係数から各層の層せん断力係数を仮定
  2. 上部構造の応力解析と部材設計
 
地震応答解析
(時刻歴解析)
 
  1. 上部構造の復元力特性の設定
  2. 設計用入力地震動の設定
  3. 地震応答解析の実行
  4. 上部構造,免震層の目標性能が満足されていることを確認
 
基礎構造他の設計
 
  1. 基礎構造,免震部材取付き躯体部分の設計
 
その他の設計
 
  1. 建物周囲クリアランスの決定と擁壁等の設計

注)建設省告示2009号にに示されている「応答スペクトル法」で設計されたものも,時刻歴応答解析をし,目標性能を満たしているかどうかを確認することを推奨します。


2. 設計上の留意点


   

(1)免震層設計についての一般的留意点

  • 免震建物周囲の擁壁,通路,隣接建物,置物等とのクリアランスを確保する。
  • 免震層は半屋外であり,雨風の吹き込み,結露,小動物の侵入等を予想しておく。(排水設備,換気等)
  • 点検や免震部材取替えのために通路を確保する。(梁下高さ,部材搬出入路)

(2)上部構造の構造計画と応答特性

  • 免震構造は,建物形状や構造形式に関係なく免震効果を発揮する。現在では,超高層建物や軟弱地盤でもその効果が研究によって明らかになっている。
  • 上部構造の捩れ振動を防ぐために,上部構造の重心と免震層の剛心とを極力一致させる。剛性調整は積層ゴムでは難しいが,ダンパーの配置を工夫することで簡単に出来る。(積層ゴムは柱位置に固定されているため。従って,ダンパー一体型積層ゴムでは簡単ではない。)
  • 免震構造物の地震応答特性は,上部構造が剛体的に並進運動し,加速度応答の増幅が極めて小さいこと。そのための条件は,次の3条件を全て満たすことが必要である。
    1. 免震周期 ≧ 4秒
      (免震周期Tf:ダンパーの剛性を無視して積層ゴムのみの剛性を考慮し,上部構造が剛体と仮定した時の建物の1次固有周期。ここに,Tf=2π√(W/g /Kf),W/g=建物質量(g:重力加速度=980cm/sec),Kf=積層ゴムの水平剛性の合計)
    2. 免震周期/上部構造のみの1次固有周期 > 2〜3
    3. 上部構造の第1層の剛性/免震層の初期剛性 > 50〜100(2次モードを無視できる条件)

(3)耐震性能目標

  • 従来は,所謂法38条建設大臣認定取得のための日本建築センター評定で,免震建物の耐震性能目標をレベル1(中小地震用)とレベル2(大地震用)の2段階を設定し,地震動の地表速度をそれぞれ20〜25cm/sec以上,40〜50cm/sec以上に設定することとしている。また,免震建物の終局時性能の確認という意味で,更に“余裕度レベル”(例えば75cm/sec以上)を設定している。但し,これらの数値は建物の建設地の地盤特性を反映した地震波によって設定すべきであり,上記数値は一応の目安(最低値)と考えるべきである。
  • 但し,平成12年6月の建築基準法の性能規定施行に伴い,法38条認定は削除され,替わって「特別な検証法」として施行令第81条の2,告示第1461号の構造計算基準に基く時刻歴応答計算により構造安全性の検討を行い大臣認定を取得するルートが出来た。また,大臣認定取得が不要のルートである「一般化した特別な検証法」が,免震構造についても告示第2009号として示された。その中では,時刻歴応答計算ではなく応答スペクトル法による応答値評価方法が示されている。なお,免震部材は上記「特別な検証法」,「一般化した特別な検証法」では性能評価はなされず,別途,法37条,告示第1446号の建築材料(免震材料は告示2010号で追加された)として大臣認定を取得しなければならなくなった。
  • 上部構造の耐震性能としては,基本的には大地震に対しても無損傷としたいが,少なくともレベル1は弾性限度に留め,レベル2では多少塑性化を許すとしても簡単な修復で済む程度に留めたい。終局耐力まで許容すると修復不能の可能性があり,本来の免震思想に反する。

(4)設計用地震動の設定

  • 従来の日本建築センター評定では,標準波と称されている“EL CENTRO 1940 NS”,“TAFT 1952 EW”,“HACHINOHE 1968 EW”の他に人工地震波“BCJ L 1,L 2”が用いられることが多かったが,本来は建設地の地盤特性が反映された地震波が望ましく,現地の地盤調査をして近くに確認されている活断層の破壊を想定した人工地震波も採用されている。なお,平成12年6月の建築基準法の性能規定施行に伴い,設計用地震動の設定の方法も変更になったため,確認する必要がある。
  • 但し,平成12年6月の建築基準法の性能規定施行に伴って設定方法が変わり,従来の標準波やBCJ波は参考波の扱いになった。免震建築用の入力地震動は,免震告示に従う場合は,一般建物と同じく告示1457号に示された方法により加速度応答スペクトルを設定する。

(5)地震応答解析

  • 複数の地震波による時刻歴応答解析を実行し,最も厳しい応答結果に基き構造設計をする。但し,実際に発生する地震動は不明であるので,応答結果の評価には構造設計者の工学的判断が必要である。
  • 振動応答解析のモデル化の良否は免震構造に限らず重要であるが,従来の耐震構造との決定的な違いは,解析モデルの挙動は実挙動と極めて良く一致するということである。
  • 即ち,従来の耐震構造は力学的に不明な部分が多い(特に,実物大の弾塑性域での動的特性はほとんど分かっていない)ので解析モデルの精度が悪い。一方,免震構造では上部構造への作用力が準静的でありかつ部材はほぼ弾性的に挙動し,免震部材の履歴特性は実大試験にて確認されてモデル化されているので,解析モデルの精度が格段に良いということである。

(6)基礎構造の設計

  • 免震構造では上部構造からの応力伝達が少なくなるので,全般的には基礎構造の設計応力は減るが,免震層特有の免震部材からの局部応力に対して十分安全に設計し,免震部材がその性能を十分発揮できるようにしなければならない。
  • 軟弱地盤でも免震構造が成り立つことは明らかになったが,基礎構造の健全性確保が前提である。この問題は従来の耐震構造と何ら変わることはないが,地盤の液状化や側方流動による基礎構造の損傷を防ぐ配慮が必要である。

(7)その他の留意点

  • 免震構造だから従来の耐震構造よりも安全だと思い込むことがないようにしなければいけない。実際に発生する地震動は予想がつかないので,免震,耐震の区別にかかわりなく安全性を100%保証することは不可能である。但し,免震構造の方が与条件に対する応答の予測精度が高いので性能評価の信頼性は高い。また,建物の内容物・機能の保全の観点では耐震構造は免震構造に遠く及ばない。