
緑の芝生と木造の建築の調和がうまくとられている(古川真紀) |
アプローチの両側に造られた緑のマウンドの間を抜け進んでいくと、周りを鮮やかな芝生に囲まれた学生寮が現れた。2000年3月竣工、木造2階建て、延べ床面積5600m2のこの建物の収容人数は206人。部屋は2人部屋で構成されている。配置計画については、共同性を考え、中心に共通の場となる中庭を設け、その周囲を回廊が囲むような形となっている。
2年前のアートポリス見学会のときも、私たちはこの農業大学校学生寮を訪れている。当時、まだ竣工したばかりで雨も降っており、新しい木の匂いと中庭からの土の匂いが一段と感じられ、とても気持ちが良かったのを覚えている。木・草・野菜・石の4つの中庭は鑑賞用としてしか使われてなかった。最近では、寮のイベントを行ったり、洗濯を干したり、と実際に利用されているようだ。訪れたのが日曜日という事もあり、学生はほとんど見られなかった。中庭に置かれた物干し竿や廊下に出されたごみ箱など、見た目にはよくないが、普段の生活を感じ取れる物が以前より増えていたように思う
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ガラスや鉄骨などで造られるスマートな現代建築が「白の建築」と呼ばれるのに対し、自然や風合いの変わる素材を使った藤森照信の建築は「赤の建築」と呼ばれている。この学生寮もまた、木や銅で作られた外壁が2年の間に良い色に変色し、味わい深い外観を造っていた。また、中庭から差し込む光で建物内はとても明るく、窓や通風口を開ければ涼しい風が入ってくる。まさに温かみのある「赤の建築」であると感じた。(仲野綾,高倉慈広) |