
ピロティ。子供の空間。(村松龍治) |
この竜蛇平団地は、大小2つの三角形が並んだ不整形な敷地に、直線的なピロティの棟と、段状に積み重なった棟の2棟が構成されている。2棟の間には中庭があり、これでもかというほど植栽が植えられている。私達が見学に行った際、まず目に付いたのが長く広がるピロティ空間であった。その日は梅雨入り直前の日曜日で、しかも炎天下ということもあり、ピロティの日影では子供たちが遊んでいた。「団地の昼下がり」という言葉がぴったりの、のどかな風景がそこにはあった。その奥に広がる中庭に出てみると、まず目に付いたのは緑の多い中庭よりもむしろバルコニーに広がる洗濯物であった。
もともと、設計者である元倉眞琴は、お互いの生活を感じあう中から集まって住む意識を育もう、というねらいがあった。階段―テラス―LDKに至るまでをオープンにすることによって、お互いの生活を十分に感じさせてくれる。そういう意味では、ねらい通りだったのかもしれない。しかし、私が見学してみて感じたのは、「見えすぎている」ということだった。階段を上がると隣人のバルコニーが目に入り、覗いているわけでもないのに見えてしまう。一階の住人の方は「人の目が気になる」「いつもカーテンを閉めっぱなし」と仰っていた。
設計のねらいとしては成功でも、実生活におけるねらいまでは成功していないようである。(村松龍治)
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