■熊本県立美術館
豊かな緑を借景に/エレベーターの検討が必要



エントランス。木々に囲まれ、違和感がない。(浜田風子)
熊本城の二の丸広場西端に位置するこの美術館は、1976年、前川國男によって設計された。地下1階、地上3階、RC造である。

第一印象は、美術館が全く目立っていないということだった。外観は、せっ器質タイルで色調が統一され落ち着きがあり、周囲の木々やその雰囲気の中に溶け込んでいたが、決して存在感を失ってはいなかった。
館内は、高低差を利用してロビー・吹抜けホール・喫茶室等の空間が明瞭になっていた。そして、私達の目を引きつけたのは、二の丸広場を一望できるガラスの高い開口部である。内部から見える周辺の木々が借景となり、それらを徹底的に意識してつくられているのが一目瞭然だった。しかし、ロビー・吹抜けホール・喫茶室が1つの大空間になっているため、空調が良いとは言えなかった。

ロビーの下部に位置する装飾古墳室は小さな照明だけで暗く、意図したものとはいえ、目の悪い方には少し歩きづらいのではないかと思えた。また、エレベーターは後から増設したらしいが、大きめの車椅子で乗るのが困難になるというトラブルが起き、再度改善が必要だと思われる。

最後に、この美術館は外部との関係に対して十分に計画され、喫茶室は外部から直接アプローチできるため二の丸広場を利用する人も気軽に立ち寄るなど時々憩いの場として利用するという声を聞き、美術館であってそうでないという印象が残った。このように、鑑賞するという目的だけでない美術館は数少ないと思う。(松田洋子)

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