■八代広域消防本部庁舎
開放的なデザイン/市民にも開放的?



なめらかなカーブを描く棟と心地よい風が流れるピロティ(仲野綾)
交通の便の良い大通りに面するこの八代広域消防本部庁舎は、よくある重圧感を拭えない消防署とは対照的に軽快感あふれる消防署という印象だ。

高さを2層に抑え、地上レベルを都市公園として開放することで周辺環境との折り合いが図られた。消防署の庶務スペースである2階レベルはピロティによって空中に浮かべられ、正面からのヴォリュームは直方体のようだが、訓練に必要な領域が大きくカーブを描いて切り落とされている。

内部は中庭を見渡せる全面ガラスの片廊下式で、そこから各部屋へとアプローチする構成となっている。廊下は明るく見通しも良いが、各部屋の採光にはばらつきがある。また廊下の全面ガラスは開閉できないために温度調節はエアコンに頼りきりだそうでコストは大変なものとの不満も聞かれた。さらに、全体の軽快感は構造上の不安定性につながっており強風時に激しい揺れを感じるそうだ。普通の消防署が1階部分に車庫、その奥に事務所という配置であるのに対してこの庁舎は1階ピロティに車庫、2階に事務所という配置である。そのため普通の消防署よりも出動までの時間がかかってしまうというのが、おおかたの消防士、救命救急士の方々の意見である。

 ある救命救急士の方にお話を伺っている最中、出動のサイレンが庁舎内に鳴り、その方は話の途中であったがあっという間に走り去った。サイレンが救急車のサイレンへと変わるまで、その間、わずか20秒といったところだったろうか。機敏な対応に圧倒されつつ、この速さでも普通の消防署より時間がかかっているのか、と思った。(藤田咲)

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