トイレ


草千里公衆トイレ。トイレの屋上は緑化され、手前の丘から続いている。
(原井隆)
◆草千里公衆トイレ
設  計:塚本 由春+齋藤百樹建築設計事務所
建築年:1998年
所在地:阿蘇郡阿蘇町


壁面にガラスと樹脂加工した檜のルーバーのカーテンウォールを用いることによって、公衆トイレを計画する際、最大の問題となる採光と通風を同時に解決。実際、臭気もなく、何やら清潔なカンジがしたのは竣工してそれほど経っていないからというだけでもなさそうだ。

手前のエッジを分岐点として、何やら可愛気なサインを手がかりに男子トイレと女子トイレに分かれ、奥に伸びているのだが、それぞれ手前と奥に出入り口が設けられており、更に便器の固体数の割に広く、奥行きを感じさせない。

トイレの両側の斜面を登ると、草千里を一望できるちょっとした展望台みたいなカンジになっているのだが、トイレの屋根は斜面に連続し、牧草で緑化されており、草千里の雄大なランドスケープに溶け込み、消えてしまう。

ただ残念なのは、手摺をつけるとキレがなくなるからだろうか、屋根の上部は侵入禁止だった(もちろん我々はズカズカ侵入するのだが)。
(原井隆)


阿蘇山上公共トイレ。半分以上はオフシーズンのため閉められていた。
(原井隆)
◆阿蘇山上公共トイレ
設  計:木島 安史
建築年:1992年
所在地:阿蘇郡白水町

阿蘇山において、高い所に位置すると言うことは、火山ガス及び火山灰の影響を強く受けることを意味する。これらの自然環境からくる悪条件を解決するために、木島氏がとった解決法は、7棟の小さなユニットからなる分散型のトイレである。分散させることによって、シーズンオフには一部のユニットを閉鎖して、清掃費や光熱費を削減する。事実、我々が見学した時も半分は閉鎖されていた。しかし、そうなることによって、残念なことに我々は半分しか見学することができなかった。外壁はタイルなのでそれほど汚れは目立たず、内部は杉材の壁がきれいに保たれていた。これもユニットにすることのメリットだろう。
(原井隆)


文楽邑道の駅公衆トイレ。左下に白木の小さなベンチが備え付けられている。
(豊田佳奈)
◆文楽邑道の駅公衆トイレ
設  計:小材 健治
建築年:2001年
所在地:上益城郡清和村

清和文楽館の道路を挟んだ向かい側、広い駐車場の隅にポツンと建っている直方体の箱、それが清和文楽館トイレである。グランドラインから2mほどの高さまでは、黒く焼かれた木の板で覆われ、上部はすりガラスで光が室内へ十分入るようデザインされている。外観の白と黒の組み合わせが、日本の伝統である和の中にも近代的な雰囲気を感じさせる。そのことが視覚的なトイレの清潔感に通じているように思えた。中に入ると天井は高く、すりガラスを通して入る淡い光が、不潔という公衆トイレのイメージを崩した。トイレの表には、小さなベンチが備え付けられ、本来の目的だけでは無く小休憩がとれる場として清和文楽館を訪れた人々に親しまれている。
(豊田佳奈)
◆ダイナミック総括
 3つの公衆トイレは駐車場に建つという点で同じであるがそれぞれの計画は大きく異なる。それはそれぞれの自然環境、景観等の諸条件の相違によるものだろう。敷地を読むことの重要さを再確認した。
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