Pホール内部を貫く杉の斜材
(藤田咲)
■杖立橋+Pホール
設  計:新井 清一+シダ橋梁設計センター
建築年:1996年
所在地:阿蘇郡小国町

阿蘇外輪山の外側に位置する小国町は地域固有の資源や条件を生かした独自の地域づくりを展開している。杖立橋は小国町の奥座敷、杖立温泉街を分けるように流れる筑後川に架かっており、くの字型のタワーが特徴的な斜張橋である。そして橋との一体化を考えて建設されたのがPホールである。その名の通りPの形をした建物で、トラス構造となっている。ホール内観は落ち着いた雰囲気を醸しだし、基礎の一部が室内を貫通してインテリアの一部となっており、独自の空間が創り出されている。ホールは、普段はカフェとして運営され、写真展、絵画展などさまざまなかたちで使用される多目的ホールとなっている。

杖立温泉街は昔ながらの家が川に沿って密集して建ち並んでおり、「懐かしさ」が感じられ、前を流れる筑後川、そして背景の山々との兼ね合いで一層懐かしく感じられた。これとは対照的に、杖立橋とPホールは独立した一つの芸術作品であり、新建築でもあるため、「目新しさ」が感じられた。

そのため温泉街との調和として、第一印象は杖立橋とPホールがういている印象を受けた。実際、地元住民に話を聞いてみたところ好印象を抱いている人は見当たらなかった。
(林和義,藤田咲)

馬見原橋の歩行者専用デッキ。催事の会場としても使用され、町の人々に親しまれている。
(藤島友紀)

川面を真下に眺める穴が2つ
(藤島友紀)
■馬見原橋
設  計:青木 淳+中央技術コンサルタント
建築年:1995年
所在地:阿蘇郡蘇陽町

馬見原橋は宿場町として栄えた阿蘇郡蘇陽町の中心地を流れる五ヶ瀬川に架かっている。この橋は二層式の上下にわかれたユニークな形をしている。横から見れば唇のように見え、上の歩車道は上唇、下の歩行者専用道路は下唇である。下唇にかかる引張り力を、柱による突き上げと上唇にかかる圧縮力で相殺している。上唇は町並みの方から見れば、注連縄(しめなわ)のかかった夫婦岩の間に消えていく。上唇は一般的な「渡る」機能をはたしている平凡な橋。下唇は木製のデッキになっており、渡る時の上唇を潜っていくような視線の変化が面白い。

そして、下唇の中央には丸い穴が二つあけられており、そこから五ヶ瀬川の清流を覗き込むことができる。川からの風を直接感じることができ、とても清々しい気持ちになれる。下唇は上唇を屋根として日射と雨を遮って人がそこに留まりやすい空間を提供している。暑い夏には日陰で川面から伝わる冷たい風で涼めるだろうし、雨の日には通りがかって、雨宿りがてらに友人と川を見ながら話や休憩ができるであろう。

単に川を横断するだけの橋では忘れがちな川の存在をもう一度見つめ直させ、川の上での楽しみを与えてくれる、馬見原橋はそんな橋である。
(林和義)
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