
馬見原橋の歩行者専用デッキ。催事の会場としても使用され、町の人々に親しまれている。
(藤島友紀)
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川面を真下に眺める穴が2つ
(藤島友紀) |
■馬見原橋
設 計:青木 淳+中央技術コンサルタント
建築年:1995年
所在地:阿蘇郡蘇陽町
馬見原橋は宿場町として栄えた阿蘇郡蘇陽町の中心地を流れる五ヶ瀬川に架かっている。この橋は二層式の上下にわかれたユニークな形をしている。横から見れば唇のように見え、上の歩車道は上唇、下の歩行者専用道路は下唇である。下唇にかかる引張り力を、柱による突き上げと上唇にかかる圧縮力で相殺している。上唇は町並みの方から見れば、注連縄(しめなわ)のかかった夫婦岩の間に消えていく。上唇は一般的な「渡る」機能をはたしている平凡な橋。下唇は木製のデッキになっており、渡る時の上唇を潜っていくような視線の変化が面白い。
そして、下唇の中央には丸い穴が二つあけられており、そこから五ヶ瀬川の清流を覗き込むことができる。川からの風を直接感じることができ、とても清々しい気持ちになれる。下唇は上唇を屋根として日射と雨を遮って人がそこに留まりやすい空間を提供している。暑い夏には日陰で川面から伝わる冷たい風で涼めるだろうし、雨の日には通りがかって、雨宿りがてらに友人と川を見ながら話や休憩ができるであろう。
単に川を横断するだけの橋では忘れがちな川の存在をもう一度見つめ直させ、川の上での楽しみを与えてくれる、馬見原橋はそんな橋である。
(林和義) |