木魂館

設  計:桂 英昭+設計計画石丸事務所
建築年:1988年
所在地:阿蘇郡小国町


真夏に近い日ざしの中、緑の中にギラギラ光るギザギザ屋根が見えてくる。いかにも建築家が手掛けた建物だ…。ああ、なるほど、あれが木魂館か。

グランドより木魂館を望む。BOX梁によるギザギザ屋根が目立っている。手前はボールと戯れる学生たち
(副島久江)
木魂館は簡易宿泊施設をもつ研修施設として計画された。スタッフはソフト運営管理を含めて5人、常駐は3名となっている。スタッフと利用者の意見を聞いた。暖房がストーブしか無くて寒い、具体的にどこがということはないが全体的に何となく使いにくい、歪みが起きていて不安、等。一見問題点の様に思えるのだが、実際には問題ではないらしい。どういうことかと尋ねると、この建物は研修施設なので多少の不便さは自己管理によってまかせる、とのこと。冬の寒さならば、寒いということを事前に理解してもらって厚めの服を着て過ごす。セキュリティーでも、玄関を常に開けている為に稀に問題が起きているが、安全さより自由さが利用客には受けているのでこれでよい…、そう断言された。このあたり、「それでいいのか?」とか「都会生活に無いものがあって好感が持てる」、等と我々でも賛否両論な点であった。

しかし、建物への印象は事前に見た木魂館の名前や資料から期待していたものとは大きく違っていた。名前から木の強さや魂を感じる様な建物なのかと考えていたのだが、まず目についたのはステンレスの大屋根だった。ギラギラと光ってその存在をアピールしており、その為か外壁の杉板は薄っぺらに感じられた。デザインやステンレスの存在感が木の強さや魂を上回っているからだろうか…。一方、内部での小国杉を使ったBOX梁構法はどうだろう。その◇形で内部空間を演出してはいるが、黒塗りのボルトや鉄材がむき出しでベタベタと木材に張付いており、矯正機具か拘束具の様な印象を受ける。薄暗い室内に強調されているからかも知れないが…。何故こういったことをするのか?対比で小国杉を持ち上げると言うのなら本末転倒ではなかろうか。

それにしても現像した写真を見るとイメージが大きく違っていることに気がつく。写真からでは実際には感じられ無いものがあるのだが、こうも違うのか…。ともあれ、3班で木魂館の好意的な意見は少数のままであったが、それでもこのデザインに桂英昭の木材の利用に関する意欲を見、学生達が暑さ凌ぎに木魂館に逃げ込んでソフトクリームにありつく姿を見、グラウンドでボールと戯れる姿を見ていると、文句が多く聞かれた木魂館も(名前以外は)けっこういいのではないのか、という気がしてきた。頭がクラクラするほどの日ざしの中で、つとにそう思う。
(野本和範,市丸友理)
エントランス上部のBOX梁部分を望む。ボルトや照明カバーの黒が気になる。
(篠原通高)


エントランスを望む。見学会の最中に、ここのソフトクリームに飛びついた連中は多数存在する。 
(撮影:高山峯夫)
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